Nami Goto solo exhibition「-monos.」
oil print (monotype)/wood panel
2010.6.10-22/Nagano D&Department Project Nagano by Coto
数ある版画の技法の中にモノタイプ (monotype) という、版に直接描画をしてそこに紙をのせ転写する方法がある。モノタイプの mono はギリシャ語の monos ( モノス )に由来しており「ただひとつの」という意味をもっている。名前の由来からも分かるように、モノタイプは他の版画技法と違いひとつの版から一枚しかプリントすることができず、それゆえ版画の中でも絵画に近い表現が味わえるとされている。 私はモノタイプを行う描画の材として油絵の具とホワイトガソリンを選んだ。油絵の具をアクリル板の上にローラーでのばし、そこにホワイトガソリンを垂らすと油絵の具とホワイトガソリンが作用して様々な模様をつくりだす。その様を紙に写し取るが最初に引く油絵の具の濃さ、ホワイトガソリンを垂らす位置や強弱、気温、湿度、紙質などが加わって多様な表情が生まれる。完成画面をイメージしながら私は作為的に手を動かすが、模様が生まれる過程は計り知れず偶然的だ。半ば、私の意図とは関係なく展開されていく画面をただ固唾をのんで見つめ、機を逃さずに写し取る、という作業。写し取った画面は自然界に相似し、現象が織りなす天然性に満ちている。それは現象の軌跡であり、その軌跡を凝視するほど驚くほど美しい色や形や表情が存在している事に気づく。想像を超えた美がそこに現れる。
-monos. / 2010 藁半紙、油絵の具、木製パネル